やれないなら、やれることを。やさしい榊。

神棚には、
榊をお供えする習慣があります。
青々とした葉を神さまのそばに置き、
水を替え、
枯れた葉を取り、
きれいに整える。
できることなら、
本物の榊を飾りたい。
そう思っている人は、
きっと多いのだと思います。
でも、毎日は、
けっこう忙しい。
仕事があって、
家のことがあって、
ごはんをつくって、
片づけをして。
気づけば、
もう一日が終わっている。
榊の水を替えることは、
ほんの数分のことかもしれません。
でも、その「ほんの数分」が、
むずかしい日もあります。

ちゃんとしたい、という気持ち。
神棚のことになると、
どうしても「ちゃんとしなければ」と
思ってしまいます。
本物の榊を用意して、
水を替えて、
枯らさないようにして。
もちろん、
そうできることは素敵なことです。
でも、
できなかったからといって、
祈る気持ちまで、
なくなるわけではありません。
むしろ、
「ちゃんとできていないな」
と思っていることそのものが、
大切にしたい気持ちの
あらわれなのかもしれません。
だったら。
やれないことを、
無理にがんばらなくてもいい。
やれないなら、
やれることを考えよう。
そんなところから、
「やさしい榊」は生まれました。

置くだけの、榊です。
「やさしい榊」は、
水を必要としません。
置くだけです。
水替えはいりません。
枯れることもありません。
毎朝きちんと、
お世話をしなくても大丈夫です。
だから、
忙しい暮らしの中にも、
無理なく置いておくことができます。
でも、
簡単にしたかったのは、
祈ることではありません。
祈りまで簡単にするのではなく、
祈るための負担を、少しだけ軽くしたかった。
そんな道具です。

そこに込める気持ちは、本物でいい。
本物の榊ではありません。
だからといって、
そこに込める気持ちまで、
代用品になるわけではないと思っています。
朝、神棚の前を通ったときに、
ちょっと手を合わせる。
出かける前に、
今日もよろしくお願いします、と心の中で言う。
帰ってきたときに、
今日も無事でした、と伝える。
大切なのは、
もしかすると、
そういうことなのかもしれません。
形を守るために、
祈ることが負担になってしまったら、
少しもったいない。
置くだけでいい。
そのぶん、
手を合わせることを、
暮らしの中に残していけたら。

昔のままではなく、昔から大切にされてきたものを。
昔から続いているものには、
理由があります。
だから、
なんでも新しくすればいいとは、
思っていません。
でも、
昔と今では、
暮らし方がずいぶん変わりました。
家の大きさも、
働き方も、
家族のかたちも、
一日の時間の使い方も違います。
だったら、
道具のほうが、
少しだけ今の暮らしに近づいてもいい。
昔からのものを、
そのまま真似するのではなく。
昔から大切にされてきた
「意味」を残しながら、
いまの暮らしへ。
それが、
いのりオーケストラが考える
新しい神具のあり方です。

「本物の榊を飾りたい日」には。
そして、
「やさしい榊」には、
もうひとつの使い方があります。
花器としても
お使いいただけるようにつくりました。
だから、
今日は本物の榊を飾りたい。
そんな日は、
生の榊をお供えすることもできます。
毎日じゃなくてもいい。
お正月や節目の日だけ、
本物の榊を飾るのもいい。
普段は「やさしい榊」。
できる日は、本物の榊。
どちらかひとつを
正解にする必要はないと思うのです。
その日の暮らしに合わせて、
その人なりに続けられること。
それが、
いちばん長く続く祈りなのかもしれません。

やれないなら、やれることを。
ちゃんとできないから、
やめてしまう。
それよりも、
できる方法を、
つくってみる。
祈りは、
がんばるものではなくて、
暮らしのそばにあるものだから。
昔から大切にされてきたものを、
いまの暮らしの中でも、
無理なく大切にできるように。
やれないなら、
やれることを。
置くだけ、簡単。
「やさしい榊」
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